「マスカレード・ホテル」に学ぶサービス業の極意
高級ホテルはとにかく素晴らしい
去年の夏、私は所用で神戸のとある高級ホテルに宿泊した。
私は、過去に野球のオタクをやっていて、遠征でしょっちゅうホテルに泊まるが、寝られればなんでも良く、ビジネスホテル中心で、高級ホテルとはさほど縁がなかった。
しかし、なんとなくじゃらんのポイントが貯まったから、いつもよりお高いホテルに泊まっちゃおうかなーと、夜景がキレイな事に定評のあるホテルに宿泊することに決めた。
ロビーからもう、そこには富裕層の世界が広がっており、ミジンコみたいな存在の私の荷物も運んでくれて、ドアも開いてくれて、そこから見える夜景も素晴らしくて、朝食も運んでくれて、美味しくて食べすぎ、とにかく自分が尊い存在なんだ!って認められるくらい自己肯定感が上がる。
それから、関西に遊びに行く時は高級ホテルを使うようにしている。
自分のに自信がもてなかったり、心ない一言で傷付いた人には、高級ホテルに泊まる事を強くオススメしたい。
マスカレード・ホテル あらすじ
一流ホテル・コルテシア東京の優秀なフロントクラーク山岸尚美は、都内で起きた連続殺人事件の捜査の為にホテルマンに変装して潜入する捜査官・新田浩介の教育係を命じられる。
現場に残された暗号に、次の犯行現場がコルテシア東京だと判明した為だ。
お客様を快適な気分にさせる事にやりがいを感じている尚美と、人を疑う事が仕事の刑事新田は、お互いに、相容れない世界の人間だと理解しつつも「プロ」だと認め合い信頼関係を築いていく。
しかし、次から次へと怪しい客が現れて翻弄される中、二人は真相を掴み犯人を見つける事ができるのか?
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(以下ネタバレ)
という訳で、2日かけて読了したマスカレード・ホテルだが…
表紙や宝塚の舞台化で、都内のホテルでも仮面舞踏会でも行われるのかな?と疑問に思ったんだけど、そうじゃないんだね…(題名の理由は後で明記します)
サービス業に従事する方必読の書
ヒロイン、山岸尚美のホテルマンとしてのプロ意識がとにかく素晴らしい。
最近はお客様は神様じゃない、という説の方が優位に立っており、それには同意できるけれどTwitterなどで「こういう客は来ないでください」と「店の禁止事項」をご丁寧に飲食店のメニューなどに、貼り紙をしている写真を目にする事がある。外国人対策というのもあるだろうが、明らかに上から目線でお客様を選り好みしているようで、あまりいい気分はしない。
しかし、コルテシア東京のフロントクラーク、山岸尚美はどうだろうか。
序盤、禁煙室にワザと煙草の煙をくゆらせ、「禁煙室なのにタバコの匂いがする!」と怒鳴り込んで無料の部屋のアップグレードを狙った「プロクレーマー」がいた。
他の従業員や尚美自信が「ワザと」だと見抜いているにもかかわらず、彼女はクレーマーを黙らす為に「スイートルーム」をあてがったのだ。
スイートはさすがにやりすぎ。他の部屋でも満足したと思う、と口を尖らせる同僚に対して尚美は「納得しなかったら?なんだかんだと難癖をつけられて結局いくつも部屋を見せて回る事になったら、そっちの方が面倒だと思わない?」と一蹴。
これで、クレーマーに罪の意識を植え付けることもできるし、コルテシア東京で同じ手は使わないだろう。ホテル側は今回、痛い思いはするが、これでwin-winだ。
読者に尚美の優秀さを理解してもらう、素晴らしいエピソードである。
「店の禁止事項」を貼り紙する、上から目線の店主にはとても思いつかないだろうと思う。
だからこそ一流なのだ。
ホテルに来る人々は、お客様という仮面を被っている
マスカレード・ホテルの題名の由来は尚美が昔先輩に教えられた「ホテルに来る人々は、お客様という仮面を被っている、そのことを絶対に忘れてはならない」という台詞が全てだと思う。
「ホテルマンはお客様の素顔を想像しつつも、その仮面を尊重しなければなりません。決して剥がそうとしてはなりません。ある意味お客様は仮面舞踏会を楽しむためにホテルに来ておられるのですから」
事件の緊張から、遂に我を忘れてミスをしてしまった尚美が新田に言った一言。
ベテランなら、ミスをしてしまった時に、自分を取り繕ったり、言い訳したりするものなのに、すぐに反省。次の教訓に生かすのだ。
日本ミステリー会、最高のヒロインではないだろうか?私は感動した🥺
いい小説は明日への活力になる
私がこのブログを書いている時間軸では、日曜の午後5時で、そろそろ月曜の明日のことを思うと憂鬱になる時間である…
でも、ひたむきに仕事に立ち向かっている山岸尚美のことを考えると、とても仕事行きたくない😫ダルい😱とは言えないのだ。
やっぱり、仕事で輝いている女性は魅力的だ。と気づかせてくれたマスカレードホテル。
私にとってはじめての東野圭吾だったけれど、この本を読んでいる時間はとても良い時間だった。
良い小説は明日への活力になる。この本に出会わせてくれた、宝塚歌劇団、瀬戸かずやさんにも感謝です。
(ダルいけど)お仕事がんばってやるぜ!という気になりました。またあしたから、頑張りましょう!