バルセロナ展に行ってきた@静岡市美術館
(静岡市美術館での展示は2020年1月19日(日)まで!!)
私は、さほどスペインの歴史にも詳しい訳ではなく、バルセロナ=バルサFCとか、昔オリンピックやってたとか、なんだかカタルーニャ地方に属するらしいとか、サグラダファミリアだの、ハプスブルグだのそのぐらいの知識しかなかったんですよね(アイルランドや旧ユーゴ諸国、なんかは大好きなんですけど!!)
美術展を観る前に、それとなく歴史を調べて行ったほうがより楽しめるのだけど、あまりスペインに関心の無かった私は、西洋美術が観れるのなら別にいいや、と前知識は殆どないまま、静岡市美術館の登りエスカレーターに足を置いたのでした。
バルセロナ=誇り高き女神
カタルーニャ人の宗教観と伝統を取り入れつつ、19世紀、20世期と新しく芸術の街として発展していくバルセロナはまるで、誇りと自信に満ち溢れている女神のよう。
まさに、その女神(?)を表しているのでしょうか。入口近くに展示してあったアウゼビ・アルナウ作の《バルセロナ》と題した彫刻。
節目がちで厳かな表情の女性のブロンズ像なんだけれども、バルセロナのセルフイメージ(要するにに擬人化)の投影だそうです。
この美しい胸像に心を奪われてしまった私はすっかりバルセロナの虜となってしまい、ワクワクしながら展示を観て回りました。
1888年のバルセロナ万博
展示されているものは、絵画に始まり、リトグラフ、建築(ガウディが有名)、家具、貴金属、装飾品など。
雑多で見るものの目を楽しませてくれる展示品の数々。
特に1888年のバルセロナ万博に関する資料は興味深く、日本も参加したという資料も展示されていて、少し嬉しくなります(参加国は8カ国)
その資料には、日本人形や瀬戸物、ツボ、ちょうちんなどの写真が写っており、カタルーニャにおける日本美術の影響を伺い知ることが出来ました。
個人的には、他の国の展示も知りたかったのだけど、万博のポスターや公式パンフレット(分厚い!)やアルバムは眺めているだけで胸が踊ります。
労働者の平均寿命短すぎ問題
19世紀は産業革命があったわけで、城塞都市バルセロナにも沢山の工場が建てられます。
そうなると工場主の上流・中流階級の富裕層と低賃金労働者の差は激しくなっていきます。
バルセロナ展の目玉は、フランセスク・マスリエラ《1882年の冬》という油彩ですが、一見すると上目使いの可愛らしい少女が毛皮のマフに手を入れて寒さに耐えているところが描かれています。この少女は淡い水色のフランス人形みたいなベルベット(に見える)のコートを着ているのですが、いかにもお金持ちのお嬢様。
その隣に展示されているジョアン・プラネッリャ《職工の娘》には、ボロボロの服を着て自動織機を操る少女が描かれています…。
その、蒸気機関で動いているであろう自動織機はいかにも熱そうで、小さい女の子が危険な仕事をしている事に胸が痛みます。
彼女の背後には暗くて殆ど見えませんが、ラインの責任者でしょうか、壮年の男性の姿が不気味に浮き上がっています。
この時代では、6歳から働き始める事が普通だったそうで、不衛生で環境は劣悪。
栄養状態が悪く、1837〜47の十年間の平均寿命は富裕層ですら36歳!!なんと、労働者は23歳!!現代の働き盛りの年代にも達する事なく、死んでいくという、悲しい歴史。
(参考資料は図録)
描かれた2人の少女は10歳前後の子供なんですよね。
《1882年の冬》の少女は富裕層の子供ながらも、バブルが弾けてその親にとって、厳しい時代の幕開けになりそうな予感を表した絵。
この2つの絵画では、同世代の彼女たちが、富裕層と労働者とで全く異なる生活をしていたこと、両階級間の決して埋まる事がない深い溝を、この対極の絵画から肌で感じる事ができます。
バルセロナの都市文化と芸術活動にときめく
展示は前半、バルセロナの工業都市としての鬱々とした場面を切り取ったものが多かったのですが、中盤、後半は富裕層向けのアクセサリーや家具、ミュシャを思わせるリトグラフやポスターなどが多くなっていきます。
ラモン・カザス《アニス・デル・モノ》
このリトグラフはいかにも「夜の女」が、インドの民族衣装のような服を着て、ウォッカのボトルをかかえたお猿さんと手を取り合い、あやしげな視線をこちらに向けています。
他にもピカソも出入りしていたカフェ「四匹の猫」での芸術家達の交流にちなんだ展示もあり、とてもエキゾチックな雰囲気に浸れます。
バルセロナの情熱的な雰囲気も、産業革命の寂しげな雰囲気も、カトリックの宗教的な展示もあり、お正月早々厳かな気分にもなれ、大満足でした。
お正月休みもそろそろ終わりですが、会期もあと少しなので、足をむけてみてはいかがでしょうか?
バルセロナ、スペインにちなんだグッズもたくさん揃っていて、とてもオススメですよ。